どこの市町村も問題山積の固定資産土地評価なわけですが、ここで問題を大雑把に2分類してみます。
対処療法的に解決すべき問題
典型的なものは、前基準年度の価格との対比による価格調整です。全体的な地価が下がっているのに、部分的に路線価が上がってしまった、納税者に説明できないので、個別に路線価に補正を加えるか、といったことです。
これはこれでもちろん必要なことです。ほとんどの市町村では、担当職員が路線価のバランスを図上で確認して最終調整しています。これはもちろん土地勘がいりますし、ある程度経験のいる仕事なので、ここの部分を業者委託している場合も少なくありません。
ちなみに、遂行能力のまるでない会社が受託しているケースも多いです。広域的土地評価は
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地元の土地勘がないと絶対必要
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土地評価の経験を一定以上積まないと絶対必要
という事情があるのですが、これを満たす会社がないとか、見つけられないとか、ほかの業務とまとめて発注したいとか、等々とにかくいろいろなアンマッチがあったりして、こと個別の路線価の調整ということに関して、有効に機能する委託が行われているケースは全国的に少ないのではないでしょうか?
まあ、ベテランの職員の方がいてきちんと見ていれば問題ないのですけど、土地の評価というのはいろいろ難しい事情があって、職員の方だけではどうしても分からないことも実は多々あります。
長期的・計画的にしか解決不能な問題
個別の路線価の調整は、最終的にはもちろん必要なのですが、やはり全体的に評価の体系を見直したほうが健全なバランスを保てます。必要なことは、例えば
- 用途地区区分の見直し
- 標準宅地の選定の見直し
- 状況類似区分の見直し
- 比準表の見直し
などです。これらを変えると前基準年度との均衡が変わるので、あまり触らなかったりします。が、全体的な価格体系のゆがみを直すには、やはり根本的に手を入れていく必要があります。
例えるならば、躯体が腐っている家を表面的な補修工事でいつまでももたせるのも限界があるということです。どこかで、建て替えが必要になります。そして建て替えは補修工事より難しいですから、よりいっそういろんな条件が揃うことが必要です。これを職員の方だけで行うにしても、まともに遂行能力のある業者が委託するにしても、そんなに簡単なことではありません。
加えて市町村というのは必ず職員の異動があります。土地評価のように明らかに長期的経験を要する業務であっても関係なく異動します。やっと概略が分かってきたころには異動です。自分の在任中にリスクの大きい建て替えをやりたくない、というのは大変もっともな話ですし、そのことが固定資産評価の精度に実際に大きな影響を与えているのも事実だと思います。
さて、話がいろいろ蛇行しますが、ここで考えて欲しいのは問題解決の均衡ということです。
対処療法と抜本療法は車の両輪です。いま、病人が目の前にいるとして、とりあえず、まずは痛みをとらなければならない、熱を下げなければならない、ということがあります。しかし、根本的に病気を治すには、日々の食事を変えたり生活習慣を見直すことも必要でしょう。これらはどちらも必要なことで、要は両者の均衡を考えることが大切です。
しかし、現実にはどうしても目の前の対処療法に頼りがちです。そしてそれで済んでいるという実情もあります。その弊害は誰が被っているのでしょうか。不公平な課税を強いられている市民です。