土地の価格形成要因には、いろいろなものがあります。
鑑定の世界では、一応、地域的なものと個別的なもの(対象地固有の要因)に分けて考えるのが通例です。
とりあえずここでは、地域的なものに限定して考えてみます。
まあ考えられる要因としては、常識的に道路幅員とか鉄道駅への距離とか小学校やスーパーへの距離とか、たとえば不動産のチラシに書いてあるようなものがあげられます。
これらの要因を良く考えてみると、たとえば道路幅員や駅距離などのように、比較的数値化可能なものもあります。しかし、たとえば、街区の整備具合とか居住の環境とか、商業地でいえば繁華性とかは、一般的には数量化(計量化)不能です。
おおむね街路、交通接近、行政的な条件については計量可能なのですが、環境条件については計量不能なものが多いと言えます。
もっともたとえば繁華性の程度を10段階に点数化するようなこともできないわけではありませんが、これは実は直接価格を決めているのとほぼ同意味です。価格形成要因から演繹的に価格を求めるというプロセスに役立つわけではありません。
問題は、数値化不能要因の価格に与える影響がかなり大きいことです。非常に大雑把にいいますと、だいたい街路、交通接近、行政的条件を全部合わせたくらいの影響力があります。
当然ながら比準表は数値に対して適用するもののなので、数値化不能要因の影響が半分もあれば、どのみち鑑定で比準表など適用しても補正はほぼ必須です。そしてその補正の過程は環境要因の影響度合いの判定=価格の判定、になってしまうので、結局のところ鑑定で比準表など使っても、価格判定への影響という点ではお題目程度の意味しかありません。
まあそれは鑑定士はだいたい知っていることなので、通常は問題ないです。(なかには分らない人もいて、大真面目に比準表を分析したり作ってしまったりします)
次に固定資産の路線価計算に使う比準表について考えてみます。
路線価計算では鑑定とは事情が異なります。状況類似地域があって、鑑定地(標準宅地)の近くのみで比準表を適用するからです。逆に言いますと、比準表の回る範囲が状況類似地域の範囲ということになります。つまり、数値化不能な環境要因がほぼ同じ範囲ということになります。
そのような制限があれば、比準表というのはそれなりに機能します。
実際、何千何万の路線の評価は比準表の適用なしではまず不可能でしょう。
以上、土地評価で比準表が有効でない最大の理由は実は単純なことで、「数値化不能な要因の影響が大きい」というのが結論です。
そして、状況類似内のように「数値化不能な要因の影響」がほぼ同じ範囲においては、比準表はそれなりに有効だということです。
次回、固定で使う比準表の分析の問題点について説明してみたいと思います。