固定資産評価での時点修正について、あまり知られていない(主に不動産鑑定士)ことについてお話したいと思います。
自治体からの依頼で時点修正を請け負っている鑑定士は少なくないと思うのですが、鑑定士は半年なり一年なりの修正率を出しているだけなので、それを受け取った自治体がどのように処理しているか、案外知らないことが多いです。
時点修正の計算には、2つポイントがありまして、
①総乗積が1を超えない
②総乗積が前年を越えない
①は良く知られていますが、②は案外知られていません。わたしも実は数年前まで知りませんでした。
地方に行きますと、いまでも地価は下がりっぱなしなので、あんまり考える機会もないのですが、都心部では最近は結構値上がりも多いので、この原則は意味を持ちます。
さて、3年間の間に、地価が上下に変動するとどうなるのでしょうか?
ケース① 1年目 鑑定士(半年間) 0.9 自治体(半年間) 0.9 / 2年目 鑑定士(1年間) 1.1 自治体(1年半) 0.9
ケース② 1年目 鑑定士(半年間) 1.1 自治体(半年間) 1.0 / 2年目 鑑定士(1年間) 0.9 自治体(1年半) 0.99
の2つのケースについて考えて見ます。
ケース① 2年目の総乗積 0.99 これは1年目の0.9を超えるので0.9を採用
ケース② 同じく2年目の総乗積 0.99 これは一年目の 市町村採用数値の1.0を超えないので、そのまま0.99
つまり、上がって下がる場合と、下がって上がる場合は、結論が変わってきます。
これは制度上の問題なので、とりあえずどうしようもないです。
が、、、、この場合いずれも真実は0.99なわけです。ところがケース①では0.9で時点修正後価格が(課税時には)計算されます。
当然次基準年度ではまた鑑定をしますから、そのときに過年度の値上がり分も上がるわけです。というか、そうならなければおかしいんですね。
しかし、次基準年度の鑑定時に、たまたま地価が値下がりしていたりすると、鑑定士としては正しく時点修正分を把握していても、実際にそれが課税に反映される時期とは、1、2年ずれてきます。
これは自治体で説明してもらうしかありません。一般に人に説明するのはやや難しいですよね。
さて、鑑定士が標準宅地を鑑定する際にケース①の0.9をベースにここからの変動率のみで次基準年度の鑑定価格を決めたらどうなるのでしょうか?
当然過去の時点修正率と矛盾した結論になるでしょう。真実は0.99なんですから。でもそれを知らないで0.9しか知らないとしたら。。。
時点修正をする鑑定士と鑑定をする鑑定士は必ずしも同じではないので、これは実はあり得る話なんですね。
一般の人はそんな馬鹿なことが、と思われるかもしれません。
しかし、標準宅地というのはいろんな場所に置かれています。ほとんど土地取引のない田舎にも。
そういう地域では、まあ相場といっても、よく分わらないんですね。どうしたって前回の評価額に依存してきます。その前回価格に誤解があるとしたら。。。
まあ、実際には田舎の相場はあんまり変動しないんで、そんな極端なことにはならないです。しかし、原理的にはこういう問題は結構発生していると思われます。だから、不動産鑑定士も時点修正の適用の原則をきちんと理解しておいたほうが良いということです。