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私的固定資産評価概論

標準宅地の鑑定での不動産鑑定士の役割について

今日は標準宅地の鑑定に当たって、鑑定士の役割はなにか、ということについてお話したいと思います。
といいますのは、実際に標準宅地の鑑定をやっていて鑑定士サイドに誤解や認識不足が多いなと感じるからです。
自治体と鑑定士の役割分担といっても良いと思います。双方に誤解があるように思います。

まず、鑑定に当たって自治体から状況類似区分図を渡されるケースが多いのではないでしょうか。
別にいいんですが、これって何に使うのかしら?
といつも私は思います。

全体的な位置図のついでに状況類似区分線が入っているというのは、全く問題ありません。ですが、私の所属する分科会では旺文社のマップルで標準宅地の座標による位置図を作っています。つまり、パソコン上ですべての標準宅地の位置は分かります。
それとは別に状況類似区分図が配られる理由は何でしょうか?

一説によれば、不動産鑑定士は状況類似全体の状況や価格水準を踏まえながら、標準宅地の価格付けを行わなければならないと言われています。
では、どのように踏まえて、どのように価格に反映させるのか、と突っ込むと、まあまともな答えは返ってきません。
例えば、標準宅地の位置での価格が100,000円として、状況類似全体の水準が平均的に90,000円だったとします。すると、それに引っ張られて標準価格を95,000円とかにするのでしょうか?

そんなばかな、なんですが、路線価計算の比準表が正しく機能していないので、ちょっと鑑定下げてよ、なんて言われることもあるのでしょうか?
それは比準表の問題、もしくは路線価の補正を個別に行えばよいだけの話です。つまり鑑定士の領域ではないんですね。

状況類似図が配られる合理的な理由があるとするなら、状況類似の中であまりに偏った位置に標準宅地がある場合に、鑑定士が自治体にそのことを指摘できる、ということくらいかなと思います。
まあ、それは鑑定士じゃなくても分かりそうなことなんで、鑑定を委託する前に標準宅地の選定は一度きちんと確認したほうがいいと思いま
す。

ちなみに、鑑定理論上は必ずしも標準宅地の位置に標準画地を置かなくてもいいんですが、固定資産評価では主要路線の価格を求めることが目的なので、鑑定地と標準画地の位置が異なると大変混乱します。ので、これはやめたほうがいいです。その前提で以下、話を進めます。

さて、、鑑定に当たって主要路線のデータが配られることはありますか?愛知県では結構良くあります。
これは、配ってもらったほうが良いと思います。
というのは、鑑定地の前で測った幅員と主要路線の幅員が異なっていることが珍しくないからです。
そして、これはなかなかに奥深い問題です。

まず、主要路線の幅員(あるいはすべての路線の幅員)がどのように決められているのかが問題です。まあ、区画整理済みのところなら6mとか8mでノープロブレムですが、田舎にいくとだいたい道路はうねうねしています。1本の路線の中でも一様ではありませんよね。
多くの自治体では、納税者有利の原則とかいって、最低幅員を採用しています。すると、例えば主要路線4m、鑑定地の幅員5mということが本当に起きるわけです。

これ、すごいまずいんですね。鑑定士は5mで価格を査定しています。しかし、路線価計算にはいったとたんに、その価格を4m路線の価格として、計算するわけです。となりの5m路線は当然主要路線よりも高く査定されることになります。
納税者有利と言いながら、その状類内の路線価は全部割高になってしまいますよね。

そもそも最低幅員を採用するという方針があまり良くない気がしますが、その場合でも主要路線だけは標準宅地の幅員と合わせる必要があると思います。とするなら、鑑定士に鑑定依頼をするに当たって主要路線のデータを渡して、チェックしてもらうのは有益です。
もっとも、鑑定書を受け取った後で、路線データと照合しても、まだ手遅れではありませんが。
いずれにせよ、ここは一致させる必要があると思います。

逆に、鑑定の幅員を主要路線に合わせてくれ、なんて依頼はありませんか?
たぶんあまりないと思いますが、実はわたしの地元では結構あります。
これはどうなんでしょうか?

まあ、理論的にはそこの差分は個別的要因に反映させることも可能ではあります。が、幅員の違いというのは、結構対象地の心象にも影響を与えるものです。
実際、鑑定を行うに当たって、現地が5mなのに、4mに接しているとして評価して、1m分を個別的要因で増価する、なんてことはすごく不自然ですし、その4mの標準画地を頭の中で想定するというのも、なかなか難しい。と、普通の鑑定士は考えるのではないかと思うのです。

とするなら、無理な想定をして価格査定の精度を下げているわけですから、あまり良くないですよね。そういう無理な想定を鑑定士に依頼するのは、わたしは止めたほうがよいと思います。

やはり、標準宅地の選定時に路線の幅員と対象地の前面幅員がほぼ一致するように選定するのが好ましいと言えます。いずれにせよ、そこの部分は自治体サイドで対応することなんで、鑑定士の領域ではないということです。

普通の不動産鑑定士は、固定資産評価のプロセスの中では標準宅地の鑑定を行うのみで、その前後がよく分かりません。
であるが故に、自治体からあれをやってくれこれをやってくれ、と言われると、固定資産評価というのはそういうものか、と思ってしまう傾向があります。でも本当は、それは自治体がやるべきことで、鑑定士に言ってもしょうがない、あるいは鑑定の精度を高めるという意味で、聞かないほうがいいことも多いと思います。
一方、自治体サイドも鑑定でなにをやっているのか、いまひとつピンと来ませんから、鑑定士にはっきり言ってもらわないと、どこまで頼んでいいのか分からないということになります。
お互い悪意はないんですが、仕事の境界が双方よく分からないんですね。

やはり鑑定評価基準や鑑定の実際のプロセスは不動産鑑定士にしか分からないのですから、胸を開いて自治体と良く相談したほうが良いですね。勝手に思い込んでしまうのが、一番よろしくないと思います。

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