固定資産評価では標準宅地の鑑定評価を行います。そして、状況類似内の路線価を比準計算により求めていきます。
そこで、仮に想定してみます。
もし、仮にすべての路線について鑑定を取ったら、固定資産評価の精度は向上するのだろうか???
いろんな意見があるかもですが、おそらく否です。精度は向上しません。むしろ劣化する可能性大です。
そもそも土地価格比準表というのは、なんのために存在しているのでしょうか?すべての路線について鑑定を取るのは、費用面で現実的でないので、その補完をするためでしょうか?私的には答えは否です。
つまり、鑑定評価というものはそもそも価格判定において、絶対的なものではなく、比準表の上位に存在するものでもないと考えています。
普通の人は、鑑定なんて当然やったことありません。専門家の人が高い費用を掛けてやるのだから、最上位の精度があると考えてしまうかもしれません。しかし、はっきり言ってそれは誤解です。
例えば、Aという土地がありまして、これの鑑定価格はいくらか?
答えは例えばだいたい100,000円/㎡とかいうことになります。だいたいですから、95,000円/㎡かもしれないし、105,000円/㎡かもしれません。それくらいの誤差はあります。
ただし、多数地点の評価においては、評価地点相互の上下関係は通常考えますので、5%の誤差があるからといって、上下関係がぐちゃぐちゃになるわけではありません。
しかし、A>Bということが分かっているとして、その差が3000円なのか5000円なのか、ということになるとかなりあいまいになります。というか、まあ分かりえないというのが本当のところです。
では鑑定の価値というのは、どこにあるのかと言いますと、100,000円/㎡なのか95,000円/㎡なのかは分からないけれども、だいたいそれくらいである。そして、それくらいの価格がどのように導出されたかということを取引事例や収益性などから実証的に証明する、そこに本質的な意味がある制度なわけです。
反面、鑑定評価というのは、多数地点の細かい価格の上下関係や均衡をとるのに適した制度ではありません。
つまり、多数の路線価の価格バランスを滑らかに変動させていくということでは、むしろ比準表の適用を重視すべきです。これは比準表自体の精度の話とはまた別で、そうしないと広域的に公平な格差付けが難しいからでもあります。
しかし一方、前にお話したように、状況類似を跨いだ価格査定には比準表は全く無力です。価格形成要因の把握に限界があるからです。
ですから、そこは鑑定評価に頼らざるを得ない、それしか方法がない、ということで標準宅地の鑑定が行われているのでした。
以上、路線価の査定においては鑑定評価と比準表というのは、相補完する関係にあります。鑑定が上位で比準表の適用値が下位ではありません。鑑定でしかできないことは鑑定でやる、鑑定の苦手な部分を比準表で埋めていく、そんなイメージが正しいと思います。