判例解説レポート(当社顧問弁護士:ひかり弁護士法人アイリス法律事務所作成)
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H30.8号(最高裁三小法廷H30年7月17日)建築基準法第42条1項3号所定の道路該当性判断
固定資産税定期レポートH30.8号
最高裁第三小法廷平成30年7月17日判決(固定資産評価審査決定取消請求事件)
【控訴審】大阪高等裁判所平成28年6月23日判決
【第一審】京都地裁平成28年1月21日判決
テーマ:建築基準法第42条1項3号所定の道路該当性判断
第1 事案の概要
1 Aは京都市内の本件各土地の所有者であり、これらの土地に係る固定資
産税の納税義務者であった。本件各土地は駐車場として利用されている一
団の土地である。
2 Y(京都市)の策定した「平成21年度京都市固定資産評価要領(土地編)」
は、市街地宅地評価法におけるその他の街路の路線価については、地域の地
価形成要因を数量化した「京都市土地価格比準表」、「京都市細街路等に係る
建築制限等に基づく価格補正率表」(細街路等補正率表)、「京都市通路等に
係る土地利用規制に基づく価格補正率表」(通路等補正率表)等を活用し、
主要な街路の路線価に当該主要な街路とその他の街路との間における各種
の価格形成要因等の相違の程度に応じて求められる格差率を乗じて、各街
路の路線価を付設するものとしていた。
※細街路等補正率表
・「細街路等」とは、幅員が4m未満の行き止まり街路又は建築物の建築許可を受ける
ために建築基準法43条1項但書の許可を得る必要のある街路(42条道路又は通
路等を除く)をいうものと定められている。
・補正率は道路の幅員や通り抜けの可否等に応じ90%~36%と定められている。
※通路等補正率表
・「通路等」とは、幅員1.8m未満の街路、沿接する画地において単独で建築物の建
築許可を受けることが困難な画地に接する街路又は京都市土地計画局建築指導部建
築指導課に備え付けの道路縦覧図において避難通路とされているもの(42条道路
を除く)をいうと定められている。
・補正率は道路の幅員や通り抜けの可否等に応じ90%~36%と定められている。
3 京都市長は、平成18年11月、本件各土地の西側に接する街路(以下「本
件街路」という。)について建築基準法42条1項3号所定の道路(以下「3
号道路」という。)に該当する旨の判定(以下「本件道路判定」という。)を
した。
なお、京都市においては、ある道が建築基準法42条の道路に該当するか
否かについて判定の依頼があった場合には、京都市長はこれを調査したう
えで判定(道路判定)し、建築指導課は道路判定の内容を道路縦覧図に表示
している。本件街路が3号道路に該当するためには、本件街路が所在する区
域について建築基準法第3章の規定が適用されるに至った昭和25年11
月23日時点で本件街路が幅員4m以上の道路として存在していたことが
必要である。
4 京都市長は、平成21年度の本件各土地の価格を決定するため、市街地宅
地評価法により本件各土地の価額を算出したが、その際、本件街路(その他
の街路)の路線価を付設するにあたって、道路縦覧図の表示により本件街路
が3号道路であることを前提とし上記2に挙げた補正率表所定の補正率を
用いた補正をしなかった。
5 Aは、本件街路は昭和25年11月23日時点において幅員4m以上で
はなかったから3号道路に該当しないことを前提に補正率を適用して算出
されるべきであると主張し、京都市固定資産評価審査委員会に審査の申し
出をしたが棄却されたため、本訴訟を提起した(Aは途中で死亡しAの子で
あるXが承継した。)。
6 第一審は、Xの主張を認め、本件街路が3号道路に該当するとした審査委
員会の判断は誤りであるとして、審査決定を取り消した。
しかしYが控訴したところ、控訴審は反対に、本件街路が3号道路に該当
することを前提とする審査委員会の審査決定を適正と認めて、第一審判決を
取り消しXの請求を棄却した。
なお、本件街路が3号道路に該当するかどうか(つまり、昭和25年11
月23日時点において幅員4m以上だったかどうか)については、証拠から
は不明であった。
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H30.6号(京都地裁H28年3月11日)航空写真システムによる地目判定の誤りと国賠上の責任
固定資産税定期レポートH30.6号
京都地裁平成28年3月11日判決(国家賠償請求事件)
【審級】大阪高裁平成28年9月9日判決:控訴棄却
最高裁平成29年5月30日決定:上告受理申立て不受理
テーマ:航空写真システムによる地目判定の誤りと国賠上の責任
第1 事案の概要
1 被告Y 市は、平成11年に課税客体を把握する方法として航空写真シス
テムを採用し、以降、航空写真上の状況と課税状況が異なる場合、写真だけ
で明らかに認定できれば写真だけで認定し、写真だけで認定が困難であれば
実地調査を行い、課税が適正でないと判断すれば見直しを行ってきた。
※「航空写真システム」
3年に1回航空写真を撮影し、公図または地積測量図に基づき地番レイ
ヤ(航空写真に重ねるための公図)を作成し、それを航空写真にあてはめ、
その間に土地の分合筆等の異動があればこれに伴う修正を随時行いなが
ら課税客体を把握する方法
2 Y 市は、A が所有していた土地1(登記上の地目は山林)について、上記
航空写真システムにより、B 宅の底地部分と認定し、平成12年度から課
税地目をそれまでの「山林」から「宅地」に変更した。
3 また、Y 市は、A が所有していた土地2(登記上の地目は宅地)について
も、上記航空写真システムにより、土地2上に建物が存在しない現況を確認
したことから、平成12年度から課税税目をそれまでの「住宅用地」から
「非住宅用地(更地)」に変更した。
4 A は平成25年9月に死亡し、土地1及び2を原告X が相続した。
X は、
・土地1は以前から現況が山林であり課税地目に誤りがあること、
・土地2は以前から現況が田であり課税税目に誤りがあること、
に気づき、平成25年11月、Y 市税務収納課に対しその旨を申し出た。
5 Y 市は、土地1について、現地での聴取調査及び関係者との協議を経て
課税地目の誤りを認め、平成26年度から課税地目を「山林」に変更すると
ともに、平成21年度から平成25年度までの課税につき更正決定を行い5
年分の差額をX に還付した。
6 また、Y 市は、土地2についても、現地調査の結果、現況が休耕田である
限度でX の申し出を認め、平成26年度から課税地目を「田」に変更した。
7 X はY 市に対し、土地1は「山林」、土地2は「田」として課税すべきと
ころをY 市の誤りにより過大に固定資産税を徴収されたとして、過納付金
相当額の損害について国家賠償請求訴訟を提起した。
8 第一審は、土地1について、Y 市の課税地目変更が誤りであった(「山林」
として課税すべき)としたうえで国賠法上の違法性も認定してX の請求を
認め、土地2については国賠法上の違法性を否定してX の請求を棄却した。
Y 市が上訴したが、控訴審・最高裁とも第一審判決の判断を維持した。
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H30.2号(釧路地裁H29年1月31日)隣接する別々の土地を一画地として評価することができるか
固定資産税定期レポートH30.2号
釧路地裁平成29年1月31日判決(固定資産評価審査決定取消請求事件)
テーマ:隣接する別々の土地を一画地として評価することができるか
第1 事案の概要
1 X は土地①②(①②は隣接するほぼ同形状の土地で、①が西側、②が東側
に位置する。以下「本件各土地」という。)の所有者である。
2 土地②の東端はA 社所有の土地③と隣接している。また、本件土地①の
西端は町道に面し、そこには2m程度の盛土処理がされている。
3 A 社は土地③④⑤を所有し、さらに、A 社と同一の代表者のもと事実上一
体的に経営されているB 社が土地⑥⑦を所有している。
4 A 社とB 社は土木、運輸業を営んでおり、本件各土地について、X との
間で平成元年頃から使用貸借契約を結び、重機、砂利等の置き場として使用
している。
また、土地②と土地③~⑦にまたがって、一等の建物及び一個の構造物(以
下「本件建築物」という。)が建築されている。
5 Y 町長は、平成27年度の固定資産表替えにおいて、本件各土地と、A 社
所有の土地③④⑤及びB 社所有の土地⑥⑦(土地③~⑦を「本件一体評価
地」という。)とを一画地として認定して評価した。これによって、本件各
土地の固定資産課税台帳登録価格は平成26年度の約15倍もの価格(土
地①:136万円→2004万円、土地②:136万円→2005万円)と
されたため、X は本件登録価格の決定に誤りがあるなどと主張してY 町固
定資産評価審査委員会に審査の申し出をしたところ、これを棄却する決定
がなされたため、同棄却決定の取消訴訟を提起した。
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H29.12号(大阪最高裁H28年9月8日)公図上公道に接続しない土地と無道路地評点算出法の適用
固定資産税定期レポートH29.12号
【第一審】大阪地裁平成27年12月25日判決(固定資産評価審査決定取消請求事件)
【控訴審】大阪高裁平成28年9月8日判決(同控訴事件)
テーマ:公図上公道に接続しない土地と無道路地評点算出法の適用
第1 事案の概要
1 Xは、土地1~5の所有者であり、これらの土地に係る固定資産税の納税
義務者である。
2 土地1~5はいずれも都市計画区域に位置する市街地的形態を形成する
地域における宅地であって、地区区分は併用住宅地区に分類されている。
3 このうち土地1は、建築物の敷地として利用されており、以下のような特
徴の土地であった。
・地積247.85㎡、奥行20.70m
・いわゆる逆L字形地であり、北側に飛び出した旗竿地部分が存在
・旗竿地部分は、東西方向約5.29m、南北方向約9.50mの概ね矩形の土地
・旗竿地以外の部分は、東西方向約20m、南北方向約11.2mの矩形
・旗竿地部分は、北側で市道(以下「本件市道」)に1.24m接しており、さらに
これと連続して他人地(以下「本件他人地」)に4.05m接している
・本件他人地はアスファルトで舗装され、外観上は本件市道の道路敷の一部である
・本件市道は幅員が4mに満たないため、建築基準法42条1項1号の道路には該
当しないが、同条2項の指定により同条1項の道路とみなされている(2項道路)
・本件市道の建築基準法上の境界線の位置は判然としないため、土地1が本件市道
の建築基準法上の境界線と2m以上接しているかどうか(接道義務を満たしてい
るかどうか)は明らかではない
4 Y市長は平成24年9月6日付で、地方税法417条1項の規定により、
平成20年度から平成24年度までの土地1~5の各登録価格の修正をし
て、修正後の各価格を固定資産課税台帳に登録し、その旨をXに通知した。
5 Xは修正後の各価格を不服として、審査委員会に審査申出をしたところ、
審査委員会はこれらを棄却する決定をしたため、Xは決定の取消を求めて本
件訴訟を提起した。
6 第一審は、土地1について、Yが無道路地補正率を適用しなかった点は適
法であるとする一方、不整形地補正率の適用をしないものとした点などに違
法があるとして、土地1に係る審査申出の棄却決定を取り消すとの決定をし
た。Xは無道路地補正率が適用されるべきであるとして控訴したが、控訴審
も第一審の判断を相当として控訴を棄却した。
※本件訴訟では、各土地について、画地計算法の不整形地補正率、間口狭小補正率、
奥行長大補正率、無道路地補正率、所要の補正としての建築不可等補正率など各
種の補正率に係る評価の適否が争点となっているが、ここではテーマである土地
1についての無道路地補正率に係る評価について主に取り上げる。
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H29.10号(東京地裁H28年11月30日)介護付有料老人ホーム等に付属する駐車場用地と住宅用地特例
固定資産税定期レポートH29.10号
東京地裁平成28年11月30日判決(固定資産税等賦課処分取消請求事件)
テーマ:介護付有料老人ホーム等に付属する駐車場用地と住宅用地特例
第1 事案の概要
1 Xは、東京都練馬区内に所有する土地1~3(以下、それぞれ「本件土
地1」「本件土地2」「本件土地3」といい、併せて「本件各土地」という。)
の上に建物(以下「本件家屋」という。)を新築し、本件家屋をA社に賃貸
した。
2 A社は、平成26年2月1日から、本件家屋において、介護付き有料老
人ホームと小規模多機能型居宅介護施設を経営している。
3 A社は本件各土地の一部を駐車場として使用していた(駐車場1~9。
以下「本件各駐車場」という。)が、介護付き有料老人ホームの入居者の中
には、自動車を自ら運転し、本件各駐車場に駐車する者はいない。
*(注)介護付き有料老人ホーム:利用者は施設に居住し施設で生活
小規模多機能型居宅介護施設:利用者は自宅で生活し施設に通所
4 東京都練馬都税事務所長は、本件家屋が併用住宅に該当することを前提
としたうえで、本件各土地のうち本件各駐車場については地方税法に規定
する固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例を受ける住宅用地に該当
しないとして、Xに対し平成26年度分の固定資産税及び都市計画税の各
賦課決定処分をした。
5 Xは、本件各駐車場について住宅用地特例の適用が認められなかった点
を不服として、本件処分の取消を求めて本件訴訟を提起した。
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