固定資産税定期レポートH29.12号
【第一審】大阪地裁平成27年12月25日判決(固定資産評価審査決定取消請求事件)
【控訴審】大阪高裁平成28年9月8日判決(同控訴事件)
テーマ:公図上公道に接続しない土地と無道路地評点算出法の適用
第1 事案の概要
1 Xは、土地1~5の所有者であり、これらの土地に係る固定資産税の納税
義務者である。
2 土地1~5はいずれも都市計画区域に位置する市街地的形態を形成する
地域における宅地であって、地区区分は併用住宅地区に分類されている。
3 このうち土地1は、建築物の敷地として利用されており、以下のような特
徴の土地であった。
・地積247.85㎡、奥行20.70m
・いわゆる逆L字形地であり、北側に飛び出した旗竿地部分が存在
・旗竿地部分は、東西方向約5.29m、南北方向約9.50mの概ね矩形の土地
・旗竿地以外の部分は、東西方向約20m、南北方向約11.2mの矩形
・旗竿地部分は、北側で市道(以下「本件市道」)に1.24m接しており、さらに
これと連続して他人地(以下「本件他人地」)に4.05m接している
・本件他人地はアスファルトで舗装され、外観上は本件市道の道路敷の一部である
・本件市道は幅員が4mに満たないため、建築基準法42条1項1号の道路には該
当しないが、同条2項の指定により同条1項の道路とみなされている(2項道路)
・本件市道の建築基準法上の境界線の位置は判然としないため、土地1が本件市道
の建築基準法上の境界線と2m以上接しているかどうか(接道義務を満たしてい
るかどうか)は明らかではない
4 Y市長は平成24年9月6日付で、地方税法417条1項の規定により、
平成20年度から平成24年度までの土地1~5の各登録価格の修正をし
て、修正後の各価格を固定資産課税台帳に登録し、その旨をXに通知した。
5 Xは修正後の各価格を不服として、審査委員会に審査申出をしたところ、
審査委員会はこれらを棄却する決定をしたため、Xは決定の取消を求めて本
件訴訟を提起した。
6 第一審は、土地1について、Yが無道路地補正率を適用しなかった点は適
法であるとする一方、不整形地補正率の適用をしないものとした点などに違
法があるとして、土地1に係る審査申出の棄却決定を取り消すとの決定をし
た。Xは無道路地補正率が適用されるべきであるとして控訴したが、控訴審
も第一審の判断を相当として控訴を棄却した。
※本件訴訟では、各土地について、画地計算法の不整形地補正率、間口狭小補正率、
奥行長大補正率、無道路地補正率、所要の補正としての建築不可等補正率など各
種の補正率に係る評価の適否が争点となっているが、ここではテーマである土地
1についての無道路地補正率に係る評価について主に取り上げる。