判例解説レポート(当社顧問弁護士:ひかり弁護士法人アイリス法律事務所作成)
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記事一覧
H27.12号(名古屋地裁H25年11月27日)宗教施設の沐浴道場は非課税対象か
固定資産税裁判例レポート H27.12号
名古屋地方裁判所平成25年11月27日判決(固定資産税賦課決定取消事件)
テーマ:宗教施設の沐浴道場は非課税対象か
第1 事案の概要
1 Xは、×××宗の教義をひろめ、儀式等を行うことを目的とした宗教法
人である。
2 Xは、平成21年1月1日及び平成22年1月1日当時、Xの所有する
土地建物(以下、「本件土地建物」という。)に、入浴ないし沐浴のための
施設(以下、「本件温浴施設」という。)を所有していた。
3 Yは、平成22年12月1日付で、Xに対し、本件土地建物について平
成21年度及び平成22年度の固定資産税を賦課決定する旨の処分(以下、
「本件各処分」という。)をした。
4 Xは、本件土地建物は、宗教施設である本件温浴施設として使用してお
り、地方税法(以下、「法」という。)348条2項3号所定の「宗教法人
が専らその本来の用に供する宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境
内地」に該当する非課税物件であると主張し、本件各処分の取り消しを求
めた。
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H27.10号(最高裁H27年7月17日)固定資産税の賦課と所有者の確定
固定資産税定期レポートH27.10号
最高裁平成27年7月17日(固定資産税等賦課徴収懈怠違法確認等請求事件)
テーマ:固定資産税の賦課と所有者の確定
第1 事案の概要
1 Xは、大阪府堺市の住民である。
2 本件問題となった土地の登記簿の記載は、次の通りである。
(1)登記簿の表題部の所有者欄に「大字西」等と記載された土地(以下、
「本件土地1」という。)
本件土地1は、大阪府堺市内に所在し、登記簿の表題部の所有者欄に
は「大字西」「大字下共有地」などと記載されていた。
(2)登記簿の表題部の所有者欄に「堺市」と記載された土地(以下、「本
件土地2」という。)
本件土地2の所有権は、同市に帰属していなかったものの、その登記
簿には、同市が所有者として登記されていた(以下、本件土地1と本件
土地2をまとめて、「本件各土地」という。)。
3 本件各土地の現況は、次の通りである。
(1)本件各土地は、かつて、ため池又はその堤とうであった土地であるが、
固定資産税等の賦課期日における現況は、宅地又は雑種地であり、いず
れも異動状況の把握のために、堺市が作成する財産台帳に登録されてい
た。
(2)上記財産台帳に登録されている財産(以下「台帳登録財産」という。)
の管理処分及び処分については、堺市の定める要綱等において、その決
定につき当該地区の住民により組織されている自治会又は町会(以下、
「関係自治会等」という。)の総会の決議によることが基本とされてい
た。
4 当時の堺市市長らは、登記簿上から本件各土地の納税義務者を特定でき
ないとして、関係自治会等に対し、平成18年度から平成20年度分につ
いての固定資産税等(以下、「本件固定資産税等」という。)の賦課徴収は
行わなかった。そのため、徴収権が時効により消滅した。
5 そこで、Xは、当時の堺市市長や賦課徴収に係る専決権限を有する各市
税事務所長の職にあった者(以下「本件各専決権者」という。)に対して、
本件固定資産税等相当額の損害賠償請求をすること等を求める住民訴訟を
提起した。
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H27.8号(東京地裁H25年11月5日)住宅用地特例を適用せず固定資産税等を賦課した国賠上の責任
固定資産税定期レポートH27.8号
東京地裁平成25年11月5日(国家賠償請求事件)
テーマ:住宅用地特例を適用せず固定資産税等を賦課した国賠上の責任
第1 事案の概要
1 Xは、平成8年11月26日に、土地を購入した(以下、「本件土地」と
いう。)。
2 Xは、平成9年8月11日に、本件土地上に、住居(以下、「本件建物」
という。)を建築し、本件土地は、住宅用地の特例の適用により固定資産税
等が減額される小規模住宅用地(地方税法、以下、「法」、349条の3の
2、法702条の3)に当たることになった。
3 にもかかわらず、世田谷区都税事務所長は、Xに対し、平成10年度課
税分から平成20年度課税分まで、本件土地に住宅用地の特例を適用する
ことなく、過大に171万5600円の固定資産税等を課した。
4 平成25年1月7日、本件土地に住宅用地の特例の適用があることが発
覚した。
5 そこで、世田谷区都税事務所長は、平成21年度課税分から平成24年度
課税分までの本件土地の固定資産税等を減額更正処分し、還付金及び還付加
算金として、88万8800円をXに還付した。
6 Xは、Yに対し、Yが本件土地に住宅用地の特例を適用しなかったため
に、固定資産税等を過大に納付させられたと主張して、国家賠償法1条1
項に基づき、平成10年度課税分から平成20年度課税分の過納付相当額
171万1043円について損害賠償請求した。
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H27.6号(福岡地裁H26年3月7日)公共の用に供する道路の判定
固定資産税裁判例レポートH27.6号
福岡地裁平成26年3月7日判決(固定資産税等賦課取消等請求事件)
テーマ:公共の用に供する道路の判定
第1 事案の概要
1 原告らが所有する各不動産上には、新天町商店街という名称の商店街が昭
和20年頃より存在している。原告らは、同商店街を管理運営している。
2 新天町商店街は、主に東西に伸びる2本の通路に沿って、各商店が立ち並
んでいる(以下、新天町商店街の通路を併せて、「本件各通路」という。)。
3 本件各通路は、車両の通行は禁じられているものの、歩行者については、
店舗の利用客ではなくても自由に通行してもよいとされており、特に通行が
禁止される時間帯もなく、店舗の営業時間外であっても解放されている。
4 本件各通路には、本件各通路に接する店舗により、商品を展示できる範囲
の目安として赤色様の丸い点が本件各通路上に描かれている。
5 福岡市中央区長は、本件各通路について、平成23年度及び平成24年度
の固定資産税、都市計画税の賦課決定をした(以下、「本件決定」という。)。
6 そこで、原告らは、被告に対し、本件各通路は、「公共の用に供する道路」
(地方税法、以下、「法」という。348条2項5号)に該当するもので、
非課税とすべき土地が課税対象とされたとして、本件決定の取り消し等を求
めた。
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H27.4号(最高裁H26年9月25日)新築家屋の納税義務者(「所有者」)の基準(3)
固定資産税裁判例レポートH27.4号
最高裁平成26年9月25日判決(固定資産税等賦課取消請求事件)
テーマ:新築家屋の納税義務者(「所有者」)の基準(3)
(H26.6号レポートの高裁判決を覆した事案)
第1 事案の概要
1 納税者(以下、「X」という。)は、平成21年12月7日に家屋(以下、「本件建物」
という。)を新築し、その所有権を取得。
2 しかし、Xは、平成21年1月1日において本件建物の登記をしていなかった。
3 平成22年10月8日に本件建物につき、所有者をXとして、登記原因を「平成2
1年12月7日新築」とする登記がされた。
4 課税庁(以下、「Y」という。)は、平成22年12月1日、本件建物につき、平成
22年度の家屋課税台帳に、所有者をX、建築年月を平成21年12月とする所要の
事項の登録をした。
その上で、同日、Yは、Xに対し、本件建物に係る平成22年度の固定資産税等の
賦課決定処分をした。
5 Xは、平成22年度の賦課期日である平成22年1月1日の時点において登記簿又
は家屋補充課税台帳に本件建物の所有者として登録されていなかったから、本件建物
に係る同年度の固定資産税等の納税義務者ではなく、上記賦課決定処分は違法である
として、Yを相手に本件処分の取消を求めた。
6 本件賦課決定処分に対し、第1審は適法(H26.4号レポート)、原審は違法(H
26.6号レポート)と判断していた。
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